349 マッケローニのパスティッチョ

(翻訳)ペッレグリーノ・アルトゥージ『調理の知識とおいしく食べる方法』(361)


349 マッケローニのパスティッチョ

 ロマーニャの料理人はたいていこの料理が上手だ。この料理は複雑で費用もかかるが、適切につくればたいへんすばらしいものができる。とはいえ、それは簡単ではない。その地方では、これは謝肉祭に振る舞われる料理だ。謝肉祭の期間中、昼食か夕食がこの料理で始まらないことはないと言ってよく、たびたびミネストラとして提供される。

 私はロマーニャの有名な大食漢と知り合った。ある晩、友人たちの一団に混ざって不意にやってきた。その一団は待望していた十二人前のパスティッチョをやっつけようとしていた。このパスティッチョは食卓で威容を誇っていたが、この大食漢は叫んだ。「なんですって! たくさんの人に私一人分にしかならないようなパスティッチョ一皿だけなのですか?」すると、「あなたが全部食べたら、私たちが勘定を持ちましょう」という答えがあった。このただものではない男は仕事の内容をすぐに飲み込むと、すべて平らげてしまった。仲間たちはみんな驚愕の光景を目の当たりにして、「この男は間違いなく今夜破裂するぞ!」と言った。幸いにも深刻なことはなにも起きなかった。だが、男の体は膨らんで、皮が太鼓のように引っ張られ、感情が高ぶって体をよじり、ひどく動揺に動揺を重ね、まるで出産前のようだった。しかし、のし棒を持った男がいるのに気が付いた。その男はのし棒でまるでチョコレートをのばすようにして患者の腹をへこませた。その腹にはどれほどのパスティッチョがその先にも入ったのだろうか。

 このような大食漢たちや食客たちは我々の時代には古代のようによくいるわけではない。私の考えるところでは、その理由はふたつある。第一に、人間の体格が小さくなったことだ。第二に、快楽に対するある種の道徳がある。それは高い文化をもたらしたものではあるが、感覚的な快楽に取って代わってしまった。

 私の見立てでは、この料理にもっとも適しているマッケローニは、ナポリ風の長く、非常に細かい生地からつくられ、生地の部分が厚くて穴が狭いものだ。ながくゆでても大丈夫で、よく味を吸うからだ。

 さて、ロマーニャ風のパスティッチョの分量だ。これで十人分だが、好みに応じて変えてよい。いずれにしても、パスティッチョができることにかわりはない。


  マッケローニ 三五〇グラム

  パルミジャーノ 一七〇グラム

  子牛などの内臓 一五〇グラム

  バター 六〇グラム

  トリュフ 七〇グラム

  脂身と赤身のハム 三〇グラム

  乾燥キノコ ひとつかみ

  三羽か四羽分の鶏の内臓、砂肝も軟骨を取り除いてあれば使ってよい

  その上で、もしあれば、とさか、インゲン豆、生む前の卵があればなおよい

  ナツメグ


 これらすべての味付けに驚かないでもらいたい。やわからくなったパスタの下に隠れてしまうのだから。

 マッケローニを白くする。つまり、塩を入れたお湯で半分ゆでて、水を切って取り出して、四番のソースに入れて、軽く温めて、やわらかくなるまでソースを吸い込ませる。

 その間にバルサメッラを137番の分量の半分でつくっておき、鶏の内臓をバター、塩、コショウ少々で炒め、ソースを加える。それと子牛などの内臓をぶつ切りにして、小さなヘーゼルナッツほどの大きさにして、火を通したら、小さな短冊状に切ったハム、薄切りのトリュフ、お湯で戻しておいたキノコ、ナツメグ少しを加えて、すべてを混ぜ合わせる。

 パスタ生地の準備ができたとしておこう。これは数時間休ませておく必要がある。パスタ生地には589番のAのレシピを全量で使い、レモンの皮で香りを付ける。全部の準備ができたら、パスティッチョを入れていく。これにはいくつかの方法がある。だが、私はロマーニャで実践されている方法に注目したい。ロマーニャでは専用のきちんとメッキされた銅製の皿を使う。というわけで、適度な大きさの皿を用意して、全体にバターを塗る。マッケローニから余分なソースを落として、最初の層になるように広げてから、おろしたパルミジャーノ、あちこちに散らしたバターの小さなかけら、バルサメッラをスプーンで数杯、鶏の内臓で味をととのえる。同じ作業を完成して皿がいっぱいになるまで繰り返す。

 それから、最初になめらかなのし棒で、次に溝の付いたのし棒でスクード貨の厚さにパスタ生地をのばして、それで底の部分にとどくまでマッケローニを覆う。さらにパスタ生地から指二本の長さの二本の帯をつくって、それでななめに交差させて、覆ったものをしっかりとさせる。皿の縁と同じ幅の帯状の生地をまわりに巻き付け、飾り付けをするのが好みであれば、入るだけの残った生地で飾り付けるが、最上部にきちんとしたリボンをつくるのを忘れてはいけない。卵の黄身を表面全体に塗り付けてから、パスティッチョをオーブンに入れる。オーブンがなければ、家の田舎風オーブンで焼く。最後に熱いうちに、お腹を一杯にしたい人のために提供する。

Progetto Artusi

Progetto per una traduzione giapponese di "La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene" di Pellegrino Artusi

0コメント

  • 1000 / 1000