1 ブイヨン
(翻訳)ペッレグリーノ・アルトゥージ『調理の知識とおいしく食べる方法』(8)
レシピ
ブイヨン、ゼラチン、ソース
1 ブイヨン
一般に知られているように、おいしいブイヨンをつくるには、肉を水に入れ、鍋でゆっくりゆっくり沸騰させて、吹きこぼれないようにする。一方、ブイヨンではなくておいしいゆで肉が欲しいならば、細かいことを考えずに肉を沸騰したお湯に入れる。周知のとおり、海綿状の骨もブイヨンの風味をよくする。しかし、骨のブイヨンの栄養はわずかだ。
トスカーナでは、ほとんどの場合、ブイヨンに香草を一束入れて香りづけにする。この束には、ばらばらになってしまう葉は使わず、セロリの茎、ニンジン、パセリ、バジリコをそれぞれほんの少しずつ入れる。人によっては、炭火で焼いたタマネギの皮を一枚追加する。ただ、お腹にガスがたまりやすいので、万人向けではない。それから、ブイヨンにフランス風の色をつけたければ、火にかけた砂糖を加えるしかない。砂糖を火にかけてこげ茶色になったら、それを水で溶かしてから沸騰させる。溶かしきったら、びんに入れて保存する。
気温の高い夏にしばらくブイヨンを保存したければ、夜と朝に一回ずつ沸騰させる。
なべに浮いてくる泡は、二つの物質から生まれている。つまり、肉の表面のたんぱく質は温度変化によって凝固するが、それとヘマトイジン、言い換えれば血液の色を決める成分、が結びついたものだ。
土鍋は熱伝導が悪いので、鉄製か銅製の鍋が好ましい。火の調整ができたほうがよいからだ。例外は、イギリス製の鋳鉄でつくられたほうろう鍋で、ふたの真ん中にバルブがついたものだろう。
ブイヨンは最良で均質な栄養物で、活力を得るのに向いているとずっと信じられてきた。ところが、現在、医者が吹聴しているのは、ブイヨンは栄養にならず、おもに胃で胃液の分泌をさかんにすることに役立っているということだ。この問題について私は判断を下す能力がないので、医者にこの新しい理論の可否を判断する責任を委ねたい。ともかく、この理論は、これまでの常識には当てはまりそうにない。
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