46 クスクス
(翻訳)ペッレグリーノ・アルトゥージ『調理の知識とおいしく食べる方法』(54)
46 クスクス
クスクスはアラビア起源の料理で、放浪していたモーゼとヤコブの子孫たちが世界の各地にもたらした。だが、時間の経過と長い移動を経て、どんなそしてどの程度の変更が加わえられているのかはわからない。現在ではイタリアでもヘブライ人のミネストラに利用されている。二人のヘブライ人が親切にもそのミネストラの味と調理法を私に教えてくれた。その後、私は試しに自分の台所でそれを再現してみたので、その方法が正しいことは保証できる。とはいえ、読者諸氏にそれを理解してもらえるかどうかは保証の限りではない。
これはからかうような仕事ではない
この大きな作り話を巧みに語るのは
マンマとバッボと言う言葉にも適さない
次の分量で六人から七人に十分だろう
若い雌牛の胸肉の中心部 七五〇グラム
脂身のない若い雌牛、骨なし 一五〇グラム
粒の大きなセモリーナ 三〇〇グラム
鶏のレバー 一個
ゆで卵 一個
卵の黄身 一個
各種の野菜、タマネギ、チリメンキャベツ、セロリ、ニンジン、ホウレンソウ、スイスチャードなど
セモリーナを大きな陶器の平鍋かメッキした銅製の浅鍋に入れ、塩少量とコショウ一つまみで味付けし、一回につき(コップに)指二本分弱の水をちょっとずつ注いで、手のひらでセモリーナを崩して大きく膨らんでばらばらの状態にする。水がなくなったら、すこしずつ油をスプーン一杯分注ぎ、同じ作業を続ける。一回目と二回目で半時間以上かける。このようにセモリーナに手を加えたら、スープ皿に入れて、リネンで覆う。リネンの余った部分は下に回して、ひもできつく縛る。
胸肉を水三リットルといっしょに火にかけブイヨンにする。鍋からあくを取ったら、さきほど用意したスープ皿で上に蓋をするが、ブイヨンからは少し離れるようにしておく。ただし、二つの入れものの端が合わさって、湯気が逃げないようにしておく。セモリーナをこのような状態で一時間十五分置いておくが、これが蒸すのに必要な時間だ。調理時間が半分まで来たら、覆いを開けて混ぜ、またもとのように戻す。
赤身の肉一五〇グラムを包丁で叩いてから、パンの白い部分をぼろぼろに砕いたものと合わせ、塩と胡椒で味を整え、ヘーゼルナッツよりも若干大きい団子をいくつもつくり、油で揚げる。野菜をいくらか刻み、最初にタマネギを油に入れて炒めて色が付いたら、ほかの野菜を投入する。塩と胡椒で味を整えたら、頻繁にかき混ぜて、出てくる水分を野菜に戻すようにする。水分がほとんどなくなったら、肉のソースか、ブイヨンとトマトのソースあるいはピューレを入れて、ぶつ切りにした鳥のレバーとさきほどの団子といっしょに煮詰める。
包んだ布からセモリーナを取り出し、シチュー鍋入れて火にかける。沸騰させないようにして、卵の黄身をその中に溶き、さらにさきほど煮詰めたものの一部を入れてかき混ぜてから大皿に移す。このときにはあまり水分がない状態にして、広げるようにする。そこに小さく切ったゆで卵を散らす。煮詰めた残りは、鍋のブイヨンに入れて混ぜ、それを人数分のカップに分けて食卓に出す。つまり、セモリーナの大皿に添えてという意味だ。こうすれば、めいめいが自分の分のセモリーナをそれぞれの皿に入れて、ブイヨンのあとにスプーンで飲むことができる。
胸肉の中心部はあとでゆで肉にできる。
この長ったらしい説明を読んだ後で、読者諸氏には二つの疑問が浮かんでいるのではないかと思う。
一 なぜこれほどの油を使うのか、そしてなぜ調味料としても油なのか?
二 この料理の本質的な美点はつくるのが面倒なことにあるのか?
第一の疑問の答えは、イスラエルでのできごとに関わる。申命記第十六章二十一行目には、子ヤギをその母親の乳で煮てはならない、とある。だが、信仰のあまり深くない者は団子にパルミジャーノを少量加えて、風味を豊かにしている。第二の疑問には、自分で答えよう。私の見解では、この料理は盛大なお祝いに出すようなものではない。とはいえ、このような料理になじみのない人にも気に入る可能性はある。とりわけ、注意深く手を加えた場合には。
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