7 ロマーニャ風のカッペッレッティ

(翻訳)ペッレグリーノ・アルトゥージ『調理の知識とおいしく食べる方法』(15)


ブイヨンのミネストラ


7 ロマーニャ風のカッペッレッティ

 カッペッレッティという名前なのは、帽子のかたちをしているからだ。一番簡単な方法をこれから紹介するが、こうすれば胃にやさしいものがつくれる。


  リコッタ、もしくはリコッタとラヴェッジェーロを半々 百八十グラム

  バターで焼いた去勢おんどりの胸肉を一匹の半分、塩とコショウで味付けして、みじん切り用包丁でごく細かく刻んでおく

  おろしたパルミジャーノ 三十グラム

  卵 全体一個と黄身一個

  ナツメグ、香辛料、お好みでレモンの皮

  塩 少量


 混ぜ合わせた詰め物は味見をして、場合によっては味をなおす。材料がいつでもおなじ状態にあるとは限らないからだ。去勢おんどりがなければ、脂身のない豚ロース百グラムで代用してもよい。これもおなじように焼いて味付けしておく。

 リコッタやラヴェッジェーロがやわらかすぎるようなら、卵の白身を取り除く。混ぜ合わせたときに硬すぎる場合は、黄身をもう一個加える。

 詰め物を包み込むためには、小麦粉でとてもやわらかい生地をつくる。そのときには卵だけを使うが、あまった白身も少し入れる。このページに載っているくらいの大きさの丸い型で生地を抜く。詰め物を丸い生地の真ん中に置いたら、生地をふたつに折って、半月形にする。それから、両端をつかんでくっつければ、きちんとしたカッペッレッティができあがる。


カッペッレッティ用の型(訳注:図形は省略するが、編注によると原著では直径六十四ミリ)


 生地を触れたときに乾いてしまっているようであれば、指に一本だけ水をつけて、円のふちをしめらせる。このミネストラの風味をもっとよくしたければ、去勢おんどりのブイヨンが必要だ。この正気を失ってしまった生き物はとてもおいしいので、厳粛なクリスマスのときに人間のためのいけにえとして身をささげさせられている。というわけで、カッペッレッティを去勢おんどりのブイヨンでゆでるが、これはロマーニャの習慣だ。ロマーニャでは、偉大な人物たちが主人公となる上述の日に、去勢おんどりを百羽食べたと自慢している。しかし、はち切れそうな話もある。私の知り合いに関することだが、控えめに食べる人でニダースだけで十分だったということだ。

 このミネストラに関連して、ちょっとした逸話を紹介しよう。重要なことではないが、考えてみてもよい話題ではある。

 読者諸氏はおわかりのように、本のために頭を使うためにどうすればよいのかということについて、ロマーニャのお歴々はなにもわかっていない。それは、幼いころから子どもたちは親たちが本をめくるのに夢中になっているのを見てこなかったからかもしれないし、ロマーニャが享楽的な生活を簡単に送れる場所なので教育がそれほど必要だとは思われていないためかもしれない。ともかく、すくなく見積もっても九十パーセントの親たちは、子どもが後期中等学校を修了するとやる気を失ってしまう。なにかをさせようという意識がほとんどないのだ。低地ロマーニャのある村に住むカルリーノ君の両親はこうした状況になっていた。しかし、父親は進歩主義的を自負しており、息子に十分に必要なものをあたえれば弁護士にすることもできただろうし、ことによっては代議士にできたかもしれない。弁護士から代議士になるのは、短い道のりでしかないからだ。喧々囂々の議論をし、多くの助言を受け、家族内で長い言い争いをした結果、カルリーノを引き離し、大都市に行かせて勉学を継続させるという大決断が下された。そして、フェラーラが地元から近いということで、そこがよいだろうということになった。父親はそこにカルリーノを連れて行ったが、その心は悲しみに暮れていた。泣きはらす優しい母親のもとからカルリーノを引き離さなければならなかったからだ。一週間もたたないうちに、両親の食卓にはカッペッレッティが上った。長い沈黙といく度かのため息のあと、お人よしの母親は切り出した。

「わたしたちのカルリーノがいればよかったのに。カッペッレッティがあんなに好きなのだから! ―こう口にしたまさにその時、道に戸口が叩かれる音が響くと、すぐにカルリーノが飛び込んできて、部屋の真ん中でたいへんな喜びようを見せた。

「なんで帰ってきた」父親は叫んだ。「なにがあった?」カルリーノは次のように答えた。「本の前で朽ちていくなんて、ぼくの性には合わないよ。あんな地獄に戻るくらいなら、八つ裂きにされたほうがましだね」お人よしの母親は喜びに浮かれながら、走り寄って息子を抱きしめると、父親に向かって言った。「好きにさせてあげて。死んだような先生よりも、生き生きしたロバのほうがましよ。やりがいをもてることはたくさんあるはずよ」―実際、それ以降、カルリーノの関心は銃、猟犬、荷馬車を引く気性の粗い馬に向けられて、若い農民たちへの襲撃に明け暮れたのだった。

Progetto Artusi

Progetto per una traduzione giapponese di "La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene" di Pellegrino Artusi

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